1936年生まれの作者。
30代の頃、勤めを辞めて、全国を歩きお年寄りから昔の話を収集した経歴を持つ。
以前、出版された作品の新装出版。

これは、いくつかの小品を集めたものなのだけれど、中でもタイトルになった「鶏が鳴く東」は、目からうろこのような作品だった。

防人って中学の頃、習ったと思う。
九州の防衛に、関東地方の庶民を集めて、兵隊として送った、というもの。
関東はあの頃、貧しい征服された人々が住む所だし、だからそういった地方から人を集めて送った、というのが一般の解釈だと思うのだけれど。

でも、作者(斎藤たまさん)がいうには、東というのは太陽が昇る方角であり、だから霊力がある。そういう所から来た兵士は縁起が良く強い、という呪術的な思いが当時の人々にあって、だからこそ関東から兵士を集めた、とあった。

なるほどね~。

また「鶏が鳴く」というのは東にかかる枕詞なのだけれど、これは東国の人が、あたかも鶏が鳴くような良く分からない耳障りな言葉を喋るので、それを揶揄してのこと、というのが、通説のひとつ、らしいのだけれど、斎藤たまさんは、「それは違う。やはり東という方角のありがたさ、鶏という生き物の霊験ありがたさを示している」と言っていた。

作者はまだお元気なよう。
定時制の高校か何かを出て、社会に出て、市井でずっと活動してきて、しかも女性。
何冊も著作があるようだから、知っている人は知っている存在だったと思うのだけれど、本来なら、もっと脚光をあびてしかるべき人なのだと思う。
どうぞいつまでもお元気で、と思った。

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